在宅部門座談会

― 愛燦会の機能訓練指導員として働くようになったきっかけと経緯をお聞かせください。
平野:
僕は愛燦会に入職3年目で作業療法士をしています。学生時代からデイサービスでアルバイトをして、当時はご利用者さんの送迎やマシンへの誘導、お茶の提供といった業務に携わっていました。卒業後はもっと広い視野でリハビリや介護に関わりたいと思うようになり、別の施設で3年間経験を積んで、愛燦会へ転職しました。愛燦会の選考を受けた時は、受かるかどうかわからないという状況だったので「入職できればラッキー!」と思っていましたね。
牧野:
機能訓練指導員の募集枠も限られていますからね。
古田:
そうそう、スムーズに入職できるかどうかタイミングも大きいと思います。
平野:
愛燦会と言えば地元では有名なところなので、正直、受からなくても記念になるかなと思いまして(笑)でも、ちょうど良い時期に入職の機会をいただけて、本当に良かったと思います。
牧野:
僕は入職して8年目です。元々デイサービスに関心があり、愛燦会の「長寿の里・南濃」を見学したことがきっかけでした。病院勤務時代にも在宅を担当することがありましたが、今のように一人ひとりと深く関われる環境ではありませんでした。ご利用者さんの心身機能が回復すると、ご家族も喜び、介護の負担も軽減されます。在宅介護は、その人らしさに直にふれられる分、大きなやりがいを感じますね。
古田:
僕はOT(作業療法士)、PT(理学療法士)のお二人とは違って柔道整復師なんですが、柔道整復師は骨折や脱臼などのケガをされた方に対して機能訓練を行う仕事なので、接骨院や整形外科に従事される方が多くて、私自身も以前は病院に勤務していました。
牧野:
そうだったんですね。どうして愛燦会に?
古田:
僕の場合は、自分の資格と経験を、もっと別の形で活かせる場所はないかと視野を広げたとき、介護の分野でも機能訓練指導員として働けることを知ったんです。なので、志望理由は牧野さんはとは少し違いますが、業務に関わっていくうちに、在宅介護という現場で機能訓練指導員のやりがいを感じられるようになりましたね。
牧野:
トイレや食事、入浴など、日常のすべてが支援の対象になるので、自然とご利用者さんとの関わりも深くなって、一人ひとりとしっかり向き合うことができます。生活そのものに寄り添える。そこが、デイサービスならではの魅力ですね。
― 日々どんなことを大切にして働いていますか?
古田:
ご利用者さんと関わるうえで、まず一番は「その方を知ること」だと思います。どんな環境で暮らしていて、何に困っているのか。身体の状態なども含めて、丁寧に聞き取りながら情報を整理していきます。そのうえで、他職種と連携しながら訓練内容や目標を立てていくんですが、ご本人はもちろん、場合によってはご家族の想いが関わることもありますから。生活の背景までしっかり理解しておくことがとても大切になりますね。
平野:
本当にそうですよね。僕も現場で強く実感しています。目標の設定はとても大切ですね。「散歩に行きたい」「買い物に出かけたい」「夫婦で旅行がしたい」など、日常の中に明確な目標があると「何のために運動するのか」と、ご利用者さんの訓練に対する姿勢がまるで変っていきます。
牧野:
うんうん。リハビリをしていても、気持ちが伴っていないと訓練拒否になってしまったり、一方で、気持ちが強すぎても身体が追い付かないと、ムリをして危なくなったりね。段階を踏んで、メンタル面と身体状況がバランスよくリハビリに反映していかないと。
平野:
僕たちは半年に一度は聞き取りを行い、目標を「継続するのか」「更新するのか」「別の目標を掲げるのか」といった見直しをしています。特に在宅での生活を望まれる方や、ご家族の介護負担軽減のためにも、本人の目標を見つけてあげることが、デイサービスに通うモチベーションにもつながっていると思います。
牧野:
新規のご利用者さんの中には「通っても回復しないんじゃないか」と思われている方もいませんか?僕たちもご本人と相談して目先の短期ゴールと長期ゴールを設定しています。例えば短期的な目標として「5メートル歩く」がクリアできたら、次は「自分でトイレに行く」など長期的な目標へ繋げていきます。
古田:
「こうするともっと良いですよ」と勧めることがあっても、利用者さんにとっては逆に負担になってしまうこともありますからね。何を望まれているのか意識にズレがあるとリハビリが先に進まなくなってしまったり。そう思うと、本音を言ってもらえるように日頃のコミュニケーションが重要になっていきますね。
― デイサービスで働いてうれしかったことは何ですか?
平野:

「おはよー!きたよー!」みたいな軽い挨拶で朝に会えると嬉しくなります。嫌々ではなく、通うことに意味を感じてくれていたり、楽しみにしてくれていることが伝わってくるんですよね。僕の方が元気をもらいますね。
牧野:
先に挨拶されるとうれしいですよね。休みで出勤しなかっただけで「なんでおらんかったんや」って言われることもあります(笑)
古田:
僕の場合は、あんなに歩くことを拒否していた方が急に「あそこまで俺歩くわ」って言いだしたときかな。「え!急に!?」ってびっくりするけど、素直に嬉しい。歩けるようになったことで、買い物に行けるようになり、「人生の楽しみがひとつ増えた」と話してくれたんです。その言葉を聞いて、自分がその方の生きがいづくりに関われたことは喜びを感じましたね。
平野:
あと、僕は長寿の里・津島/在宅総合センターが開設2年目を迎えるにあたって「何か記念に残るものをつくりたい」と思っていたんです。そこで機能訓練の一環として施設の玄関にある大きな壁面作品を提案しました。テーマは「長寿」。長寿の象徴とされる鶴や亀、逆さ富士など縁起の良いモチーフを取り入れたデザインで、完成したときは嬉しかったです。
牧野:
面白いですよね、施設全体が盛り上がりますね。
平野:
そうなんですよ!デザインや材料の準備までは職員が担当し、その後の制作は利用者さんの身体状況に合わせて作業工程を分けたり、参加しやすい形に工夫をして。
古田:
作業に否定的な方とかいませんでしたか?
平野:
「リハビリはしたくない」と言っていた方も、この取り組みを通じて「ちぎり絵だったら少しやってみようかな」と、自然に参加してもらえました。ご本人にとっても前向きな経験になったし、作業を通じて地元の方が集まれるコミュニティーのような場にもなり、良い結果が得られたなと思います。
牧野:
「できない自分を見られたくない」と感じてしまって、リハビリを避ける方もいますからね。「できること」や「楽しめること」が入口になるのは良いきっかけになりますよね。

― 大変だと思うこと、また、どのように乗り越えていますか?
牧野:
機能訓練に対して拒否感の強いご利用者さんもいて、施設の入り口まで来て「じゃ、帰るわ」みたいな(笑)
平野:
「この場所に行きたくない」という気持ちもあれば、「取り組む意味がない」といった気持ちの利用者さんもいろいろですよね。中には「家から出たくないし、運動もしたくない」と、両方の思いを抱えている方もいますし。
牧野:
そうそう!その気持ちをどうやってほぐすかというところで、音楽はとても効果的ですよ。ご本人様の好きな歌を流すことで「懐かしいなぁ」という話になって、次第に「ちょっと歩いてみるわ」という行動につながる方もいますから。
古田:
すごいさりげなく、自然な流れをつくっていますね!
牧野:
あとは、できないことを隠してしまう利用者さんもいて「自分でできるから大丈夫」と頑なに断られることもあります。実際には歩行が不安定でも、「手を借りたくない」という気持ちが強いんですよね。歩行器や杖などの介護機器を使いたがらず、ボディチェックをするとぶつけたような痣が見つかることも。ご家族に話を聞くと実は転倒して身体をぶつけていた…ということもね。
平野:
よく分かります。とはいえ、あからさまに指摘してしまうと、自尊心を傷つけてしまうこともあるため「歩き方が少し気になるので、よかったら体を見せてもらえますか?」と、自然な流れの中で声をかけると、抵抗なく応じてもらえることが多いですね。
古田:
その方の目線に立って、気持ちを尊重しながら丁寧に関わることがとても大切だと思いますね。僕たちの仕事は知識や経験の豊富さだけでなく、人間性が問われる場面は大きいかなと。結局は人と人との関わりの中で、気付きや気遣いといったことが大事になってきます。高齢者に対して自然と優しく接することができたり、そういった「人に寄り添える気持ち」を持っている方はこの仕事に向いていると思います。
牧野:
そうですね。接遇やコミュニケーションができていないと、その先がスムーズにいかないと思います。すべての土台になる部分ですよね。僕も、根気よく丁寧に関わり続けることで、少しずつ心を開いてもらえるようになり「あの職員さんに会いたいから来る」「仲の良い利用者さんがいるから行きたい」と言ってもらえたなんてこともあります(笑)
― 今後はどのような目標(キャリア)を掲げていますか?
古田:
今後は介護全体に関わる立場として、デイサービスの運営や職員の育成、チームづくりなど訓練以外の分野にも積極的に取り組んでいきたいです。より広い視点を持って「利用者さんの生活をどう良くしていけるか」ということを意識していきたいですね。
牧野:
僕はこれからも在宅介護にこだわっていきたいですね。「長寿の里・南濃」には在宅生活を想定した機能訓練室があって、トイレ動作や床からの立ち上がりなど、日常生活に直結する訓練を幅広く行えます。室内は音楽が流れているので、訓練に消極的だった方も「何の音楽が流れてるんや?」と興味を持ち、自ら足を運んで体を動かしてくださるようになることも。在宅での自立を支えるために、機能訓練室をもっと充実させて環境づくりに力を入れていきたいですね。
平野:
僕はまずは施設全体として、ご利用者の人数が増えてきている今だからこそ、これまで大切にしてきた「一人ひとりの生活目標にしっかり向き合う支援」を維持・強化していきたいです。多職種で連携しながら、リハビリに限らず施設全体のケアの質を高めていければと思っています。そして個人的には、今後もっと「新しい取り組み」にチャレンジしていきたいです。
牧野:
職員同士で連携できれば、もっといろんなことに取り組めそうですよね。具体的にどんなことを考えているんですか?
平野:
たとえば園芸や手芸、カラオケといった、利用者さんの趣味や関心に合わせたグループを作って、楽しみや生きがいにつながる場をもっと増やせないかなと考えています。作業療法士として、そうした活動を「作業」としてきちんと意味づけしながら、支援につなげていけるように取り組みを広げていきたいですね。
牧野:
自分から「行きたい!」って思ってもらえることが一番ですからね、僕たちもうまく工夫していきましょう(笑)
― 最後に、デイサービスについて感じていること、伝えておきたいと思うことがあれば教えてください
平野:
これからはかつて介護をしていた方が、今度は介護を受ける立場になっていきます。そうすると、昔のイメージのままでデイサービスを見ている方も多くて。たとえば、「ただ預けられるだけの場所」「リハビリ機器があって訓練する場所」「食事を提供してお風呂に入るだけ」といった印象を持たれていたり。
古田:
分かります(笑) なんだか10年前、20年前のイメージで止まっている感じ、ありますよね。
平野:
でも今のデイサービスって、ジムのような設備があったり、地域のコミュニティスペースのような役割を果たしたりと、以前とは大きく変わっていますから。そういった「今のデイサービスの魅力や役割」について、こちらからも積極的に発信することができれば、もっと前向きな気持ちで利用していただけるのではないかと思います。
古田:
「今の介護サービスがどれだけ進化しているか」を知ってもらう機会が増えると良いですね。
牧野:
今は、支援の幅も広がり、さまざまな分野からのアプローチができるようになったし、利用者さん一人ひとりの“生きがい”と結びつくような関わり方も増えてきていると感じます。ただ日常を支えるだけでなく、「その方らしく生きる」ことを後押しできる場としての役割も、これからますます大きくなっていくと思いますよ。
古田:
ご利用者さんの多くが人生の終盤に差し掛かる中で、不安や困りごとを抱える方が多いんですよね。僕たちはちょうどその大切な時期に関わらせていただく立場です。少しでもご利用者さんの人生が前向きに進むようお手伝いができたと実感できたときは「この仕事をやっていて良かったな」と心から思えるんですよね。逆に、関わり方一つで相手の人生にマイナスの影響を与えてしまうこともあるので、この仕事には大きな責任が伴うと常に思いますね。だからこそ、自分にできるケアは全力で取り組んでいこうという気持ちでやっています。






